目次
- 1 トラウマとは?
- 1-1-1 トラウマが作られる体験
- 1-2 トラウマとPTSDの違い
- 2 トラウマによって引き起こされる症状
- 3 トラウマが作られる仕組みとは?
- 3-1 人間の3つのストレス反応
- 3-2 トラウマとは「冷凍保存された記憶」
- 4 トラウマを克服するためには
- 4-1 トラウマを克服するとはどんな状態か
- 4-2 薬だけではトラウマは消えない
- 4-3 心理療法で冷凍保存された記憶を消化していく
- 4-3-1 トラウマ治療に必要なポイント
- 5 トラウマは専門家の元で安全な治療を
こんにちは。
心理セラピストの
大野貴之です。
- いつまでも消えない心の傷がある
- 急に嫌な記憶がフラッシュバックする
もしそういった悩みを抱えているなら、あなたは「トラウマ」を抱えているかもしれません。
「トラウマ」という言葉は日常生活でもよく使われる言葉ですが、その時は「苦い思い出」くらいの意味合いではないでしょうか?
しかし、本当の「トラウマ」は時間がたてば徐々に薄れていく苦い思い出とは異なり、いつまでも消えずに残ってしまう心の病気です。
この記事では、そんなトラウマについて症状・原因・克服法までを一挙紹介。
過去のトラウマに悩んでいる方は、ぜひ最後までご覧くださいね。
トラウマとは?
トラウマとは「心的外傷」、つまり「心の傷」のことです。
何らかの体験によって心に傷を負ってしまったことで、心の機能が正常でなくなってしまった状態とも言えます。
なお、心に傷を負うような体験とは、災害・事故・犯罪などの強烈は恐怖体験だけとは限りません。
親との関係が悪い、学校でのいじめ、家庭内暴力など、長期間にわたって繰り返される辛い体験でもトラウマが作られる可能性はあります。
トラウマが作られる体験
- 非日常的な恐怖体験
- 日常的に繰り返される辛い体験
トラウマとPTSDの違い
PTSDとは「心的外傷後ストレス障害」のことで、トラウマ体験をしてから時間が立っているにも関わらず、同じ症状が出続ける障害です。
この症状は通常のトラウマと厳密には違いはありませんが、ある一定以上の強い体験や強い症状が出ている場合に、PTSDと診断されることがあります。
つまり、トラウマの特に症状が強いものがPTSDだと考えてもらって大丈夫です。
ただし、PTSDと診断されなかったからといってトラウマ症状が軽いものというわけではありません。
むしろ、障害ではないと言われたことで周りからの理解を得られず、本人の感じる辛さはある意味強くなるかもしれません。
もし病院ではPTSDではないと言われたけど確実に過去のトラウマに苦しんでいるなら、カウンセラーなどの心理療法を受けることをおすすめします。
トラウマによって引き起こされる症状
トラウマは体験した内容によって引き起こされる症状も様々です。
ここでは、代表的な3つの症状についてご紹介していきます。
再体験
まず代表的な症状の1つが「再体験(フラッシュバック)」です。
通常、人の記憶は覚える・思い出すといった多少のコントロールはできるものの、時間が経てば徐々に記憶は薄らぎ、不要な記憶はいずれ忘れ去られます。
しかし、強烈なトラウマ体験をしてしまった場合、その時の記憶が冷凍保存され、消えずにずっと残り続けてしまうんです。
そして、何かの拍子に解凍されるとその時のイメージ・感情・感覚などがリアルに甦ってしまい、これを「再体験(フラッシュバック)」と呼びます。
なお、再体験は悪夢として夢の中で起きる場合もあります。
過覚醒
通常、人は危険に直面すると「過覚醒」と呼ばれる興奮状態になり、危険が去ると元の状態に戻ります。
しかし強烈なトラウマ体験をした場合、危険が去っても「過覚醒」の状態が消えず、常に身体が興奮状態となってしまう場合があります。
「過覚醒」の状態が続くのは常にアクセル全開でいるようなもので、
- なかなか眠れない
- イライラや焦りが消えない
- 怒りやすく攻撃的になる
- ちょっとした刺激に敏感になる
などの状態が続いてしまいます。
また、こういった状態が長期間続いてしまうと身体にも負担がかかり、何らかの身体疾患を引き起こす可能性もあるでしょう。
回避
「回避」とは、自分の中にあるトラウマに触れないよう、関連する出来事を避ける状態です。
これ自体は自分の体を守る防衛機能なのですが、
- トラウマ体験に関する話を避ける
→話をしないようになる - トラウマ体験に関する場所を避ける
→引きごもりがちになる - トラウマ体験を連想させる人を避ける
→人付き合いをしなくなる
など、トラウマ体験に関するあらゆることを避けている内に行動が大きく制限されてしまい、生活に支障が出る場合もあります。
また、どれだけ回避を続けてもトラウマの記憶から逃れられない場合、最終的には感情マヒに繋がる場合もあるでしょう。
その他の症状
代表的な症状はここまでご紹介した3つですが、人によっては以下のような症状が出る場合もあります。
- 感情の調節障害
トラウマの影響で「ネガティブな感情が消えない」「ポジティブな感情を感じられない」など、感情のコントロールが難しくなる場合があります。 - 認知の調節障害
トラウマの影響で極端な自己否定になったり、逆に相手や世界全体を否定するようなものの見方になってしまう場合があります。 - 対人関係の障害
トラウマの影響で他人との距離感が保てなかったり、他人の評価が両極端(尊敬⇔批判)になるなど、対人関係の問題につながる場合があります。
トラウマが作られる仕組みとは?
トラウマは通常の嫌な記憶とは違って、時間が経てば自然に消えていくものではありません。
では、どうしてトラウマは長く残ってしまうのか?
ここでは、トラウマが作られる仕組みを簡単に解説していきます。
人間の3つのストレス反応
トラウマの仕組みを説明するには、まず先に「ストレス反応」について説明が必要です。
人間は危険に直面すると「ストレス反応」と呼ばれる身体的な変化が起こりますが、その反応には以下の3パターンがあります。
- 闘争(戦う)
- 逃走(逃げる)
- 解離(凍り付く)
「闘争(戦う)」は、目の前の危険なもの・状況・人を攻撃して打ち負かそうとする反応で、「逃走(逃げる)」は、目の前の危険な状況から逃げようとする反応です。
これら2つの反応を「防衛反応」と呼び、どちらも交感神経が優位になって血圧や心拍数が上がるなど、いわゆる「興奮状態」となります。
しかし、これら2つの反応をしても危険が消えない、もしくはどちらの反応も取れなかった場合に3つ目の「解離(凍り付き)」といった反応が起こります。
これは、あまりの恐怖でどうすることもできず、危険が去るまでその場で立ちすくむ(凍り付いたように動けなくなる)反応です。
人間はこれらの「ストレス反応」によって危険に対処し、危険がなくなれば徐々に元の状態に戻っていきます。
しかし、あまりに強烈な体験や長期間ストレス反応を起こし続けていたりすると、元の状態に戻れなくなってしまうんです。
トラウマとは「冷凍保存された記憶」
人はあまりに強烈な体験をしてしまうと、2つの防衛反応をすっ飛ばして一気に解離状態に陥ってしまいます。
これは要するに、普通に処理してしまうと身体が耐えられないと判断した脳が、即座に脳のブレーカーを落として強制終了させた状態です。
そしてこの強制終了によって、その時の記憶・感情・感覚・イメージ・防衛反応によって生まれた身体のエネルギーなどが、全てそのまま「冷凍保存」されてしまいます。
この「冷凍保存された記憶」は、普段は何の悪さもしない代わりに自然に消化されることもありません。
しかし、何らかの刺激によって解凍されてしまうと、当時の記憶・感情・感覚・イメージ・防衛反応によって生まれた身体のエネルギーなどがそのまま甦ってしまいます。
つまり、この「冷凍保存された記憶」こそがトラウマの正体であり、トラウマが長く残る理由なんです。
トラウマを克服するためには
トラウマの正体とは、「冷凍保存された過去の記憶・エネルギー」です。
つまり、トラウマを本当の意味で克服するには、それらを解凍して全て消化する必要があります。
ここでは、どうやって過去の記憶を消化するのかなど、トラウマの克服方法についてご紹介します。
トラウマを克服するとはどんな状態か
まず最初に考えて欲しいのは、トラウマを克服するとはどんな状態なのか?どこを目指して頑張るのか?といったことです。
トラウマに苦しむ人にとっては、やっぱり過去の心の傷は完全に消し去ってしまいたいと思いますよね。
しかし、残念ながら過去は変えられませんし、トラウマとなった程の強烈な思い出を完全に消し去ることは難しいんです。
そのため、目指すべき状態は
- 過去の”生傷”を”かさぶた”にする
(たとえ思い出しても平気になる) - 「今ここ」を幸せなものに変えていく
といった2つがトラウマ克服として目指すべき状態だと僕は考えています。
薬だけではトラウマは消えない
次に具体的な治療方法についてです。
誰もが最初に思い浮かべるのは、病院にいって薬を処方してもらう方法でしょう。
しかし、残念ながら薬ではトラウマは治せません。
トラウマによって起きているストレスや身体症状を抑えるような薬はありますが、「冷凍保存された記憶」を消化できるような薬はまだ存在していないんです。
さらに、症状を抑えるような薬も副作用のリスクがあったり、長期間使い続けると徐々に効果が薄れていくなどのデメリットもあります。
そのため、トラウマを克服するには薬による治療だけでなく心理療法が不可欠だと覚えていてください。
心理療法で冷凍保存された記憶を消化していく
トラウマの治療とは、「冷凍保存された記憶」を消化することです。
そのためには、過去の記憶を解凍して、その時の感情やエネルギーを吐き出していく必要がありますが、やみくもに記憶を解凍するのは危険です。
そもそも、その感情やエネルギーを処理するのは危険と判断した脳が冷凍保存したのであって、それをただ解凍するだけでは、また同じ問題が起こる可能性の方が高いでしょう。
そのため、トラウマ専門の心理療法では再び解離を起こさない程度に少しずつ記憶を解凍し、少しずつ時間をかけて感情などのエネルギーを消化していく方法が一般的です。
具体的な心理療法は色んな手法が存在するためここでは紹介できませんが、それらに共通する克服のために必要なポイントをご紹介させていただきます。
トラウマ治療に必要なポイント
- 曝露
曝露とはさらすということ。トラウマを治療するためには、何らかの形で過去の体験を呼び起こす必要があります。 - 認知トレーニング
トラウマの影響で歪んでしまった認知(自己否定しやすくなるなど)を元に戻すため、考え方や意味づけを見直す必要があります。 - 感情に向き合う
冷凍保存された感情を消化するために、過去の辛い感情と向き合う必要があります。 - 記憶処理
バラバラに冷凍保存された記憶を処理するためには、断片的な記憶を「物語の記憶」に編成する必要があります。
トラウマは専門家の元で安全な治療を
トラウマは過去に負った深い傷が「今」に影響を与えてしまう、とても苦しい心理障害です。
しかし、トラウマ治療の世界には「PTG(心的外傷後成長)」といった考え方が存在します。
これは、トラウマを乗り越えることができれば、今までとは180度異なる「あったかもしれない対極の生き方」を送れるようになるという考え方です。
トラウマはあらゆる場面で人生の制限となってしまいますので、それが解消されれば確実に今とは異なる人生を送れるようになるでしょう。
そのためにも、トラウマの治療は必ず専門家の元で安全な治療を受けるようにしてくださいね。
ちなみに『ライフチェンジセラピー』では、トラウマ専用のカウンセリングで過去の記憶を消化し、コーチングでこれからの理想の人生を創っていきます。
トラウマを克服するだけでなく、その後の「理想の人生」まで手に入れたい方は、ぜひ体験セッションにお越しくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。