感情は複雑でアンビバレンスなもの

こんにちは。
心理セラピストの
大野貴之(おおのたかゆき)です。


僕は心理セラピーをするにあたって、クライアントの方には感情の大切さ、役割、感じ方などをお伝えしています。


そこでクライアントの方がよく仰るのが「どれが自分の感情がわかりません」ということ。


腹が立つ気もするけど悲しい気もする…どっちが本当の気持ちかわからない…


こういったことを仰る方はとても多いです。


でもこれ、どっちが本物かを決める必要はないんです。


なぜなら、人間の心にとって、相反する感情が同時に存在することは別に不思議ではないから。


今日はそんな感情についてのお話です。


感情を感じるのが苦手、自分の感情がわからないという方はぜひ最後までお読みください。

なぜ感情が大切なのか?

まずはじめに、なぜ感情が大切なのかを簡単にご説明します。


そもそもなぜ人間には感情が備わっているのか?


それを一言で言うと、『目の前の困難を乗り越えるため』です。


今直面している問題を乗り越えるために「怒り」が、


既に起きてしまった辛い出来事(自分の力では変えられないもの)を乗り越えるために「悲しみ」が、


これから起こるかもしれない危険を避けるために「恐れ」が出てきます。


これらの感情を適切に感じることで、人は目の前の困難を乗り越え、自分の望む通りに生きていくことができます。


しかし、人間は思考がとても発達している生き物です。


そのため、本来適切に生じている感情に対しても「今は感じるべきではない」と自ら感情を抑え込んでしまうことがあります。


もちろん社会生活を送る上でそうしなければいけない場面はあります。


ですが、それが当たり前になってしまうと、目の前の困難に適切に対処できなくなり、自分の望む通りの人生を送れなくなってしまうんです。


心の問題や生きづらさを抱えている人には、例外なくこういったことが起きています。


そのため、身体が感じている自然な感情を自然に感じられるようになることが、生きづらさを解消するためにはとても大切なんです。

感情は複雑でアンビバレンス

感情を感じることがいかに大切かはお分かりいただけたかと思います。


ただ、そこで次に問題となってくるのが、冒頭に書いたように「どれが自分の感情かわからない…」といった問題です。


しかし、感情とはそもそも複雑でアンビバレンスなもの。


そのため、
 

  • 悲しいけど腹が立つ
  • 変わりたいけど変わるのが恐い
  • 好きだけど嫌い


といった一見相反する感情が同時に存在することは別に異常ではないんです。


そして、こういった相反する感情が存在する時に大切なのは、両方の感情を同時に受け入れること。


矛盾した気持ちを否定するのではなく、それが今の自分の気持ちなんだと受け入れ、納得することができれば自ずと両方の気持ちが消化されていくんです。

感情は一つに絞ろうとしてはいけない

感情は複雑で矛盾することも多いため、それを一つに絞ろうとしてはいけません。


でもそれはなぜなのか?


これは、感情は否定するといつまでも消えずに残るだけでなく、ネガティブな感情はそれが大きくなってしまう特性があるからです。


少し極端な例になりますが、交通事故で自分の子どもを亡くしたお母さんを例に考えてみましょう。


自分の大切な子どもが亡くなったので相当な「悲しみ」があるのは言うまでもありません。


ですが、それと同時に


「あれだけ道路で遊んじゃダメと言ったのに…!」
「お母さんの言うことを聞いていればこんなことにはならなかった…!」


のような「怒り」が出てくることも人間であれば別におかしなことではないんです。


つまり、「悲しいけど腹が立つ」といった状態ですね。


ですが、一般的には亡くなった人、しかも自分の子どもに対して「怒り」を感じるのはおかしいと考えられがちです。


そういった「常識」もあいまって、「自分は悲しいんだ、怒っているはずがない」と、自分の中にある怒りを否定してしまうかもしれません。


そうすると「悲しみ」はしっかり感じることができますが、いつまで経っても自分の中に確かにある「怒り」が消化できず残り続けてしまいます。


その結果、「悲しんでも悲しんでもこの喪失体験から立ち直れない…」といった状況に陥ってしまうんです。


この人がこの辛さを乗り越えるには、自分の中にある「怒り」を認めて消化する必要があるということですね。


このように、感情をどれか一つに絞ろうとすると、それ以外の感情がいつまでも消えず残ってしまいます。


そうならないためにも、全ての感情を同時に認めて受け入れることが大事なんです。

どんな感情も嫌わない無視しない

僕たち人間は感情に「ポジティブ」「ネガティブ」といった色付けをしました。


ですが、身体にとっては感情にそういった区別はありません。


感情には良いも悪いもなく、全ての感情が生きるためには必要なんです。


そして、感情に区別がないということは、特定の感情だけを感じないようにすることはできないということ。


それをしようとすると、結果的に全ての感情を感じられなくなってしまいます。


だから『どんな感情も嫌わない、無視しないこと


今あなたが生きづらさを感じているのなら、まずはこれを意識してみてくださいね。


感情を感じられない、感情が全くわからないという方は、一度心理療法を受けてみることもご検討ください。


最後までお読みいただきありがとうございました。


心理セラピスト 大野貴之