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こんにちは。
心理セラピストの
大野貴之です。
この記事ではトラウマ解決に関係する「SIBAM理論」と、その理論に基づいたカウンセリング手法の「SP法」について解説しています。
トラウマの悩みを抱えている方、トラウマの仕組みについて知りたい方はぜひ最後までご覧くださいね。
トラウマの原因や症状
まずはじめに、「トラウマ」の原因や症状について簡単にご説明しますね。
トラウマとは日本語にすると「心的外傷」、わかりやすくいうと「心の傷」です。
過去の辛い体験が心の傷となり、その後の人生において心の機能が正常に働かなくなることを「トラウマ」や「PTSD(心的外傷後ストレス障害)」と言います。
トラウマの代表的な症状は以下の3つ。
- 再体験(フラッシュバック)
⇒何らかのきっかけで過去の体験が甦ってしまう - 過覚醒
⇒常に身体が緊張状態となり、リラックスできない - 回避
⇒トラウマに関連するもの・人・状況を避けてしまう
他にも、感情のコントロールができなくなったり、極端な自己否定に陥ってしまったり、対人関係に問題が生じることもトラウマの症状と言われています。
トラウマについては以下の記事にもまとめていますので参考にしてみてくださいね。
最新トラウマ理論「SIBAM」とは?
今日ご紹介したいのは、このトラウマに大きく関係する「SIBAM理論」です。
「SIBAM」とは「人間の体験(記憶)を形成する5つの要素」のことで、トラウマ専門の心理学者ピーター・リヴァインによって提唱された概念です。
この5つの要素とは、
- S:身体感覚(Sensation)
- I:イメージ(Image)
- B:行動(Behavior)
- A:感情(Affect)
- M:意味(Meaning)
となっており、人は何かを体験した時、その体験をこれら5つの要素に分解してから別々に記憶されます。
人は「ストーリー」で記憶する
しかし、これら5つの要素がただバラバラに記憶されたのでは、何が何だか分からなくなってしまいます。
そのため、脳の「前頭葉」という部位の働きによって、これら5つの要素が「一つのストーリー」として関連づけられて記憶されるんです。
わかりやすく言うと、5つの要素それぞれに同じタグがつけられるようなイメージですね。
例えば、初恋の記憶を例に考えてみましょう。
その人と目が合った時、「全身にビビっとした感覚(身体感覚)」があり、思わず「目を逸らしてしまった(行動)」。 でもその後、「とても温かい気持ち(感情)」になり、「この人は運命の人だ(意味)」と思った。 今でもその時の「笑顔(イメージ)」が忘れられない。
ちょっとポエムっぽくなってしまいましたが…(笑)、この時の5つの要素が「初恋の物語」といったタグをつけられた上で別々の場所に記憶されます。
そして記憶を思い出す時は、「初恋の物語」といったタグで脳が記憶を検索し、該当する5つの要素が再び繋ぎ合わされて記憶が甦るというわけです。
トラウマ体験をすると記憶はどうなるのか?
しかし、トラウマ体験をした場合、こういった記憶がなされません。
あまりに強烈な体験をしてしまうと、5つの要素が「一つのストーリー」として関連づけられずバラバラに記憶されるんです。
これは、5つの要素を繋ぎ合わせてしまうとショックが大きすぎると判断した脳が、前頭葉の働きを止めることによって起こります。
そして、何らかのきっかけで
- みぞおちがキューっとなる(身体感覚)
- その時見た恐ろしい映像が甦る(イメージ)
- 心臓がバクバクして身体が震える(行動)
- とても恐ろしい気持ちになる(感情)
- 自分が悪いんだという考えが浮かぶ(意味)
など、いずれかの要素がランダムで甦ってくることがあるんです。
しかし、どの要素にもストーリーがないため、本人には何が起こっているのかわかりません。
これが、トラウマによる再体験(フラッシュバック)の正体です。
「SIBAM理論」に基づくトラウマ克服法
ここまで「SIBAM理論」を元にトラウマ記憶の形成についてお話ししてきました。
では、ここからはどうトラウマを克服していくかに焦点を当ててみたいと思います。
カギは「ストーリー」を取り戻すこと
冒頭でトラウマとは「心の傷」だとお伝えしましたが、もう少し厳密な言い方をすると「冷凍保存された記憶」がトラウマの正体です。
そしてトラウマの克服とは、その記憶を解凍して消化すること。
そうすれば、過去の記憶が甦ることもなくなり、その他の症状も治まります。
しかし、通常のカウンセリングでは、過去の感情を味わうことでその時の嫌な記憶も自然と消化させていくことができますが、トラウマの場合はそうはいきません。
なぜなら、トラウマの記憶はSIBAMの5つの要素がバラバラに記憶されており、そのままでは脳が処理できないためです。
それどころか、バラバラに記憶された嫌な感情だけを表出させた場合、それが消えないだけでなく再トラウマ化の危険まであります。
そうならないためには、まずは何よりもバラバラになった5つの要素を繋げるための「ストーリー」を取り戻す必要があるんです。
「ストーリー」は真実でなくてもいい
でもどうやって「ストーリー」を取り戻せばいいんでしょう?
実はこの「ストーリー」は、必ずしも真実である必要はないんです。
つまり、たとえ架空のストーリーであっても、5つの要素が納得できる形で当てはまれば、脳は記憶を処理することができるってこと。
例えば、映画やドラマなどを見て、なんだかわからないけどツボにはまったように涙が止まらなくなった、なんて経験はありませんか?(あまりないですかね…?)
それは偶然、その映画やドラマの「ストーリー」が断片的に記憶されていた5つの要素に当てはまり、「一つのストーリー」として繋がったということです。
他にも寝ている間に夢を見ることも、実は断片化された5つの要素を処理するためだとも言われています。(これに関しては諸説あるようですが)
「SIBAM理論」を利用したSP法
ここまでの話を応用して作られたトラウマ専門のカウンセリング手法が「SP(Story-Projection:物語投影)法」です。
その内容を簡単に説明すると、
- 同じトラウマを抱えた架空のキャラクターを作る
- そのキャラがトラウマを抱えるに至ったストーリーを作る
- そのキャラがトラウマを克服するストーリーを作る
といったものです。
これによってクライアントは、過去の傷に直面することなく安全に5つの要素を「一つのストーリー」として繋ぎ合わせることができます。
一度のストーリーだけで完全にトラウマが消えるとは限りませんが、安全性が何より大切なトラウマ支援においてかなり優秀な手法と言えるでしょう。
安全な方法でトラウマを克服しよう
「トラウマ」は放っておいても自然に解消されることはほとんどなく、かといってむやみに心の傷を掘り返しても症状が悪化する可能性のある扱いが難しい障害です。
そのため、トラウマを克服する際に最も大切にすべきなのは「安全性」だと言えるでしょう。
もし、あなたが「トラウマ」に悩んでいるなら、「安全性」に配慮したカウンセリング手法を探すと良いでしょう。
今日ご紹介したSP法以外にも、トラウマ用のカウンセリング手法は存在しますので、色々と調べてみるのもいいかもしれません。
ただし、その手法がちゃんと安全性に配慮しているか?は注意深く調べてくださいね。
ちなみに僕の提供している『ライフチェンジセラピー』では、トラウマを抱えたクライアントさまにはSP法を行い、症状が軽くなってから理想の人生に向けてコーチングを行います。
トラウマの克服だけでなく、その先にある「理想の人生」を手に入れたい方は、ぜひ体験セッションにお越しくださいね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。